最近、マクドナルドの店舗に設置されている巨大タッチパネル式の「セルフ注文端末」が「使いにくい」とSNSで大きな話題になっています。
この記事では、ユーザーの不満をUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)の基本原則に基づいて分析し、他チェーンとの比較や改善のヒントをまとめます。
マクドナルドのセルフ注文端末とは
マクドナルドが全国の店舗に導入を進めているセルフオーダー端末は、巨大な縦型タッチパネルディスプレイで、メニュー選択からカスタマイズ、キャッシュレス決済までを非接触で完結できる端末です。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進と店舗オペレーション効率化を目的に、2024年頃から本格展開されています。
一方で、スマホアプリの「モバイルオーダー」は使いやすいと好評なのに、店舗のセルフレジは不満の声が殺到するという、同じ会社なのにUXの品質に大きな格差が生まれています。
なぜ「使いにくい」と批判されているのか
SNS上で指摘されている主な不満を整理すると、以下のような問題が見えてきます(ITmedia Mobile(https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2605/14/news149.html))。
- 最後まで値段が表示されない: メニュー一覧に価格が表示されず、カートに入れて最終確認画面まで進まないと合計金額がわからない
- 操作ステップが多すぎる: ホットコーヒーSサイズ1杯を注文するだけで約10回のタッチが必要。対面レジなら一言で済む
- 追加注文の提案が押しつけがましい: サイドメニュー追加画面が途中で挟まり、操作が中断される。「面倒だからこれでいいや」と思わせる設計はダークパターン(ユーザーを意図しない行動に誘導するUI手法)ではないかとの指摘も
- ボタン位置が画面ごとに変わる: 「次へ」ボタンが上にあったり下にあったりと一貫性がなく、手の移動距離が無駄に大きい
- 多様なユーザーへの配慮不足: 子どもは手が届かず、高齢者は操作方法がわからず、外国人旅行者にも不親切
UI/UXの基本原則から見た問題点
これらの不満を、ユーザビリティの専門家ヤコブ・ニールセンが提唱した「ユーザビリティ10原則」に照らして分析してみます。
| 原則 | マクドナルド端末の問題 |
|---|---|
| システム状態の可視性 | 合計金額が最終画面まで見えない。現在のステップ数も不明確 |
| 実世界との一致 | 対面では「ビッグマックセット」で完結するのに、端末ではバーガー→ドリンク→サイドと分解して選ばせる |
| ユーザーの制御と自由 | 追加提案画面のスキップがしにくく、戻る操作もわかりにくい |
| 一貫性と標準 | 「次へ」ボタンの位置が画面ごとに変わる。モバイルオーダーとのUIも統一されていない |
| 柔軟性と効率性 | リピーターが「いつもの注文」を素早く再注文する手段がない |
また、Fitts(フィッツ)の法則(ターゲットが大きく近いほど素早く正確に操作できるという法則)の観点でも、大型縦画面にもかかわらず主要ボタンの位置が一定せず、ユーザーが腕を上下に大きく動かす必要がある点は明らかな設計上の問題です。
他のセルフ注文システムとの比較
他チェーンのセルフ注文システムと比較すると、マクドナルド端末の課題がより明確になります。
| サービス | 価格表示 | 操作ステップ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 松屋の券売機 | 常時表示 | 2〜3タップ | 写真+価格の一覧で迷わない |
| 回転寿司のタッチパネル | 常時表示 | 2タップ | カテゴリ→商品のシンプルな2階層 |
| マクドナルド モバイルオーダー | 常時表示 | 少ない | お気に入り登録可能、高評価 |
| マクドナルド セルフレジ | 最終画面のみ | 約10タップ | 階層が深く追加提案が多い |
松屋や回転寿司では「価格は常に見せる」「操作は3タップ以内」が実現されています。さらに、マクドナルド自身のモバイルオーダーも高評価であることを考えると、技術的に実現できないのではなく、店舗端末の設計方針に問題があると考えられます。
開発者・デザイナーが学べるポイント
この事例からUI/UX設計に携わるエンジニアやデザイナーが学べる教訓をまとめます。
- 価格や状態は常に可視化する: ユーザーが意思決定に必要な情報を隠さない
- 操作ステップは最小限に: 理想は3タップ以内。ステップが増えるほど離脱率が上がる
- ボタン配置に一貫性を持たせる: 主要な操作ボタンは固定位置に配置し、Fittsの法則に従う
- アップセルとUXのバランスを考える: 売上向上のための追加提案も、押しつけがましくなればブランド毀損につながる
- マルチチャネルでUIを統一する: モバイルと店舗端末で異なるUXを提供すると、ユーザーの混乱を招く
まとめ
- マクドナルドのセルフレジは「価格非表示」「操作ステップの多さ」「ボタン配置の不一貫」が主な不満
- ニールセンのユーザビリティ10原則に照らすと、可視性・一貫性・ユーザー制御の面で改善の余地がある
- 松屋や回転寿司など、他チェーンのセルフ注文は使いやすい設計を実現できている
- マクドナルド自身のモバイルオーダーは好評であり、そのUI設計を店舗端末にも適用することが改善の近道
- UI/UXの基本原則を守ることが、DX推進と顧客満足の両立につながる
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
